A型事業所の経営は難しいのか

こんにちは。所長です。

 

先日、

アベプラでA型事業所の

大量閉鎖が取り上げられていました。

 

A型事業所の経営って

実際、難しいと思います。

 

ただ、

難しいのはやる前から

わかっているわけで、

そのうえで参入しているのであれば

難しいことに文句を言うのは

お門違いだと思います。

 

ちなみに、

僕は閉所するまで放置した

所長が悪いと思います。

 

というのも、

A型事業所の補助金というのは、

今年度の4月から変わったわけですが、

そもそも、

かなり前から補助金の仕組みを

変更しますよー

っていうアナウンスはありました。

 

さらに、

補助金が下がった施設というのは、

そのほとんどが、

もともと指導が入っていて

それでも改善できなかったわけだから

そりゃ利用者は悪くないよね

 

じゃあ誰が悪いわけ?

所長以外に悪い人いる?

 

っていうのが僕の考えです。

 

元はと言えば、

A型事業所は最低賃金以上で

利用者と施設が雇用契約を結びます。

 

なので、

施設の運営側の仕事としては、

①最低賃金以上の仕事をとってくる

②上記の仕事が出来るようにサポートする

 

この2つが最低限求められます。

 

僕は、

お金を稼ぐ環境と設備、機会を

整えるのが運営の仕事で

実際に稼ぐのは

利用者の仕事だと思います。

 

ところが、

半数以上のA型事業所では

最低賃金以上の仕事ではなかった。

 

じゃあ、

どうやって利用者に

お金払っているかと言えば

ほとんどの施設では

補助金を回しています。

 

通常、就労系施設では

利用者が稼いだお金と

補助金は分けなければなりません。

 

うちもわけています。

 

利用者が稼いだお金を特別会計

補助金でもらったお金は一般会計

 

まったくの別会計にして、

お金を移してはいけません。

 

これはかなり前から言われていて

なぜつぶれるまで

ほっておいたのだろう?

 

と、疑問に思うほどです。

 

しかし、

どうやらこれが

かなり難しいらしい。

 

想像しただけでも

かなり厳しいだろうなと

思います。

 

例えば、

パン屋さんで想像してみましょう。

 

まずは分かりやすくするために

賃金にフォーカスして話します。

なので、実際の考え方とは違いますが

大枠でとらえていきましょう。

 

通常のパン屋さんを

経営しようとすると

FLBコストがかかります。

 

これは、

F=フード

L=人件費

B=家賃などレンタル費用

 

ということです。

 

パンを作る為の

小麦粉やたまご、牛乳や水など。

そして人件費と家賃がかかります。

 

もし、

あなたがパン屋さんのオーナーで、

フードコストと家賃と

自分の給料などなど

必要経費を全部払って、

残ったお金が1万円だった場合、

 

人を雇いますか?

 

雇わなくない??

 

そうです。

普通、雇いません。

 

では、

A型事業所ではどうかと言えば、

まず、

フードコストはかかります。

これは、収入を得るために

支払った経費は

売上から引かなければならない

ルールだからです。

 

次に、

人件費ですが

オーナーや店長を

仮に職員とした場合、

これは補助金で払えるので0円です。

 

そして、

A型事業所の利用者への給料が発生します。

ここが問題になるわけです。

 

先ほどの例で行けば、

オーナーの給料を仮に、

20万円とした場合、

ここが浮くので

一日4時間、週5日勤務をしてもらえば

給料は約8万円になります。

 

なので、

だいたい3人は雇うことができます。

 

次に家賃ですが、

これは補助金で払うことができるので

関係ありません。

 

仮に家賃を20万円とした場合、

さらに3人は雇うことができます。

 

つまり、

ここでは6人雇うことができるわけです。

 

すると、

今度は別の問題が出てきます。

 

A型事業所の人員配置基準を

満たすためには最低でも

2~4人は雇わなければなりません。

 

さらに、

家賃や電気代、備品のお金、

ユニフォームやクリーニングなどの雑費、

さらに銀行からの借入返済などがあれば

どう考えても

 

利用者6人が通所する補助金では

運営ができません。

 

では、仮に、

10人いれば運営ができるとしましょう。

 

そうなると、

さきほどの6人と

新たに4人利用者を増やして

10人にしたとしとしましょう。

 

そうすると、

今度は利用者の給料が払えません。

 

1.5倍以上のパンを同じ時間で作り、

1.5倍以上のパンを同じ場所と同じ時間で

売れるのでしょうか?

 

無理じゃない?

 

そうなると、

利用者に払うお金がないので

補助金から回そうという事が

発想として出てきます。

 

その為には、

利用者を増やして、

15人にしましょう。

 

そうすることで

6人で出来る事を

15人でするわけですから

当然、特別会計の赤字は膨らみます。

 

しかし、

補助金で払ってしまえば

特別会計の問題は解決します。

 

でも、

それって、

6人で出来る事を

15人でやっているので

最低賃金以下の仕事を

していることになります。

 

給料というのは

労働の対価ではなく、

生み出した価値に

対する対価であって

頑張ったから

もらえるお金ではありません。

 

誰もがやりたいくない仕事は

給料が高いと言われますが、

厳密には違います。

 

誰もがやりたくない事を

率先して行うから

価値があるだけで

誰もがやりたくない事を

頑張るから

給料が高いわけではありません。

 

大切なのは

1時間でどれだけの価値を

生み出したか?

という事です。

 

そこでいうと、

6人で出来る事を

15人でやった場合は、

1人あたりの生産性、

つまり。生み出した価値は

相対的に下がるはずです。

 

 

というわけで、

そこから脱却する為には、

1時間あたりの生み出せる価値を

最大化させていく必要があります。

 

ぱっと思いつくのは

利用者の生産性をあげる、

販路を拡大する。

 

この2点を行う必要があります。

 

というのは、

誰の仕事か?

 

それは所長の仕事だと思います。

 

なので、

最初に述べたように、

運営側がお金を稼げるようにするだけの

環境、設備、機会を整えなかったのが

問題であって、

利用者に責任はないわけです。

 

それが簡単か難しいか

と、言われれば

難しいでしょうな

という風には思います。

 

普通のパン屋さんと違って、

店長やオーナー、家賃などの

コストを稼がなくても良い反面、

利用者数で店長やオーナー、家賃などの

コストを稼ぐ必要があるので、

ある一定以上の利用者数が必要になります。

 

ここがジレンマになります。

 

優秀な人をいい立地で雇うと

利用者は増やせる可能性は上がりますが

その分、利用者が稼げるだけの

場を整える必要があって

両車輪でバランスを取らなければなりません。

 

もっと言えば、

福祉施設としてのクオリティと支援、

経営者としての手腕の両方を

同時に求められるので

結構、しんどいと思います。

 

最後に、

やりがい搾取ではないか?

とか、

B型や地活は安い工賃で

障害者を働かせるような

障害者ビジネスだー!

と、寝言を言ってる人がいるので

そこは訂正しておきます。

 

 

まず、

障害者を安い工賃で働かせる

障害者ビジネスっていうのは

構造的にかなり難しいです。

 

先ほども述べたように、

利用者が稼ぐ特別会計と

補助金の一般会計は別で、

職員の給料や法人が使えるお金は

一般会計になるので、

安い工賃で利用者を働かせて、

特別会計を潤沢にしても、

意味はありません。

 

仮に

本当は1000円払えるのに

100円しか払わないってことにした場合、

特別会計が900円あまるだけです。

一般会計は潤いません。

 

さらに、

工賃が安いと利用者が

集まりにくくなるので、

安い工賃で障害者を働かせるというのは

ビジネスとして成立しません。

 

B型事業所であれば、

高い工賃であればあるほど、

補助金単価があがるので、

むしろ逆です。

 

高い工賃=高い補助金なので

工賃が高ければ高いほど、

ビジネス的には成功しやすいです。

 

ただし、

補助金単価には上限があるので

その上限ギリギリっていうのが

一番ビジネスとして成功しやすいです。

 

工賃が高いということは

生産性が高いという事です。

 

それだけ一般就労に近づいている

とも言い換えることができるので、

高い工賃=一般就労への近道

でもあります。

 

そして、

一般就労につながればつながるほど、

利用者を増やしやすくなるし、

一般就労に移行した人がいれば

補助金も増えるので、

そっちのほうがビジネスとして

成功しやすいです。

 

なので、

工賃が安い=悪徳

というのは構造を考えれば

成立しにくいわけです。

 

それに、

やりがい搾取だとか

最低賃金を払えというなら

払ってもらえるところに

いけばいいだけ。

 

1時間200円とか300円とか

いやいやうちは100円だー

っていう作業所は

普通にありますが、

そこからのステップアップは

出来るわけですから、

進めるなら進めばいいだけで、

そこの作業所が悪いとは思いません。

 

事前にどんな作業を

どれくらいの工賃でやるのか

ということはオープンになっているし、

見学や体験利用もできるわけですから。

 

さらに、

いきなり時給1000円のところより、

まずは工賃が低いところで調整したり

気力や体力を戻すことに集中したりして、

最低賃金をもらえるところに

進むという選択肢もあります。

 

その足掛かりになるのが

工賃が低い作業所なので、

そこが最低賃金を払うような

高い生産性を利用者に求めると、

ステップアップしていきたい人が

出来なくなります。

 

また、

体力や気力と相談して

最低賃金を目指さない。

という選択肢を

つぶすことになりますから、

構造も理解せず、

しかも、

最低賃金を稼げるだけの

生産性を出せない、

その気がない人に

目を向けずに、

闇雲に工賃が低い作業所を

批判するのは

 

寝言です。

 

それでは、

障害者や高い生産性を

叩きだせない人は

一生、最低賃金以下で

生活しろというのか?

 

と、言われれば、

それは、

環境、設備、機会を

整えることが出来ていない

社会の責任なので

当事者に責任はないと思います。

 

なので、

障害者年金や生活保護があるわけで、

社会はその責任を果たしている。

あるいは果たそうとしている。

と、僕は思っています。

 

何度も言いますが、

福祉施設というのは

整えるのは運営ですが、

働くのは利用者だと思います。

 

運営と当事者が

双方で作り上げていくものなので、

運営だけを批判するのも

当事者だけを批判するのも、

僕からすれば

どちらも寝言だと思います。

 

それから、

あえて言いますが、

利用者は

B型事業所では平均的に、

1万5千円「しか」稼げない

のではなく、

福祉のバックアップと

税金を投下することによって

1万5千円「も」稼げている

 

という方が正しいです。

 

職員の人件費や家賃などなどの費用は

補助金で賄われているわけですから、

本来であれば、1万5千円も稼げていません。

 

しかし、

それは社会の側が、

環境、設備、機会を

整えられていない事に原因があるので、

社会として果たすべき責任を

果たすべく、税金を投下して、

運営を可能にしているわけです。

 

最後に、

何度も何度も言いますが、

運営と利用者は両車輪です。

 

双方で作り上げていくものです。

 

A型事業所の大量閉鎖に関しては

運営側に問題があります。

 

しかし、

B型事業所、地活の工賃が低いのは

運営と利用者の双方の関係や

生産性によって工賃が決定している

という背景があるので、

それを無視して、

最低賃金にすればいいというのは

構造的に難があり、

運営側、利用者側だけを

批判するのは、

いやむしろ、

そこに批判を述べるのは

もはや寝言。